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台風やゲリラ豪雨などの多量の雨により、停電や浸水の被害が多数発生しています。あなたの家の水害対策は万全ですか?

水害は地震とは異なり、事前に情報が得られることも特徴です。“明日の台風”に慌てないよう、普段からもしものことを考えておきましょう。

防災士であり、料理研究家でもある島本美由紀さんに水害の備え方ついて、お話を伺いました。

 

島本美由紀さん プロフィール

旅先で得たさまざまな感覚を料理や家事のアイデアに活かし、身近な食材で誰もが手軽においしく作れるレシピを考案。冷蔵庫収納や食品保存のスペシャリストとしても活躍。著書は80冊を越える。防災士としても活躍し、著書に『もしもに備える!おうち備蓄と防災のアイデア帖』(パイインターナショナル)などがある。

 

一番大切なのは、食べ物の備蓄!
食べ慣れているものを常備して
 

外に出ることが難しい水害時、一番大切ともいえる「食べ物・飲み物」の備蓄は、“非常食があればいい”と思っている人も少なくないのではないでしょうか。

 

「実は、私たちは不安になると食欲旺盛にはならず、やわらかいものを食べたくなる傾向があります。もしものときこそ、食べてホッとできるような食材を用意しておくことが大切です。

おすすめは、やわらかいパン。甘いものも精神面で助けてくれるので、お子さんがいる場合は、チョコレートパンやクリームパンなどお子さまの好きなものを買っておきましょう。もしくは、4~5年賞味期限のある缶詰のパンを常備するのもおすすめです」

 

家庭ごとの習慣も異なるように、好みも異なります。非常食を買い込むだけでなく、自分たちが安定した精神で待機できる食べ物を常備しておきましょう。

 

「子どもって、食べ慣れていないものはあまり食べませんよね。だからこそ、食べ慣れたものを備えておくと安心です。普段から食べているものを多めに購入し、ストックしておく“ローリングストック”という考え方も、徐々に浸透してきました。使ったら買い足せば、家族みんなが好きな食べ物が常にある状態になり、日付が切れているということもありません。お子さまの精神の安定のために、お菓子を多めに置いておくのもいいですね」
 

【島本さんのおすすめ備蓄】

ロングライフ紙パック製品

 

「賞味期限の長いロングライフ紙パック牛乳と豆腐が人気です。豆腐は半年、牛乳は3か月ほど常温でもつので、子どもがいるご家庭におすすめです。停電になる可能性もあるし、火が使えない可能性もあるので、開けたらすぐ食べられるものは重宝します」

 

冷凍サンドイッチ

「自然解凍でそのまま食べられる冷凍サンドイッチは、ストックに最適。クリームチーズとジャムを塗ってラップして冷凍用食品保存袋に入れておけば、1ヵ月保存できます。期限がきそうになったら食べて、また追加して冷凍貯金しておけば“食べ慣れた食材”にもなりますね」

 

冷凍フルーツ・干し柿

「フルーツも手軽です。ただ、りんごなど水分が多いものは時間が経つとベチャっとしてしまうので、出したらすぐに食べましょう。長期間保存できる干し柿や干し芋は、ベチャっとすることもなく、品質も落ちません。出回る時期の秋~春にまとめて買って、半年くらい冷凍室に入れっぱなしにしていても大丈夫。栄養価も高いし甘さもあるので、災害用におすすめです」

 

災害用の食品は値が張るものも多く、結局食べないまま期限がきて捨ててしまうということもありますよね。普段から食べているものを基準に備えておくといいでしょう。

 

停電したらどうすれば…?
季節によって備蓄も衣替えが必須!

 

水害が発生しているときは、停電になる可能性も高いです。また、停電は1年を通して起こる可能性があります。

 

「先日、豪雨により2時間半ほど停電した地域がありました。夏の暑い 時季は、家のなかで熱中症になる危険もあります。季節によって、暑さ・寒さへの対応が必要なので、備蓄も季節に応じて衣替えをしましょう。特に、夏場は水を多めに保存しておくこと。また、熱中症対策として、叩いて冷える冷却剤や、首にかける冷却タオルなど、家族で使いやすいアイテムを準備しておきましょう。

大事なポイントは、家族にわかる場所に置いておくこと。停電したとき、自分が家にいるとは限りません。いざというときに誰もが使えるよう、共通認識を持っておくことが大切です」
 

停電したら最初にすること

 

もしも停電してしまったら、慌てず対応しましょう。

「停電になったら、最初に冷蔵庫や電子レンジなど、電力消費が大きい家電の電源をコンセントから抜きましょう。急に通電したとき、ショートして故障する可能性があるためです。

冷蔵庫は、開けなければ半日くらいは大丈夫。ただし、傷みやすくなるので、缶詰など常温で保存できるものよりも先に、出来る限り冷蔵庫に入っているものから食べるようにしましょう。

また、ここで重要になってくるのが、冷凍室のストックです。実は、冷凍室にたくさん物が入っているほうが、庫内の温度は下がりにくくなります。チルド室に入れていた肉や魚を傷まないよう冷凍室に移動させるのもいいでしょう。冷凍室に物が詰まっていない場合、冷気が逃げてしまうので、なるべく詰めるようにして。普段から8割くらいを目安に詰めておくと安心ですし、電気代の節約にもなります」

 

【島本さんの停電対策 】

ペットボトル氷の常備

「氷の代わりになって庫内を冷やしてくれます。停電時はチルド室に移動させることで、チルド室の温度キープにも役立ちます。飲み水用の常温の水だけでなく、冷却用として作っておきましょう。大きいものの方が溶けにくいので、2Lペットボトルを入れておくのがおすすめです。溶けたら飲み水としても活用できます」

 

一目でわかるように収納する

「冷気はすぐ逃げてしまうので開けたらすぐ取り出せるよう、冷凍用保存袋とブックエンドなどを活用して縦に並べておくこともポイントです。上から見てどこに何があるのか一目でわかるように入れましょう」

 

カセットコンロ&ガスボンベを用意しておく

「電気だけでなく、ガスも二次災害を防止するために止まる可能性もあります。IHの卓上コンロは停電してしまうと使えないので、ボンベタイプのものを購入しておくと便利です。

温かいものを食べると安心するので、カップラーメンなど、お湯をそそぐだけで食べられるものもあるといいですね。ただ、カップラーメンのデメリットは、塩分が高いこと。喉が渇いてしまうので、粉の量を調整するとか、お湯を多めにするなど、塩分対策をしないと、のどがかわいて備蓄している水が減ってしまうことも。調整しながら、過ごしましょう」
 

マンションの場合、断水にも注意!
停電で断水する住宅は「トイレ」の準備を
 

「水害は地震とは異なり、水道菅がズレるなどして断水になることはないですが、水を電気でくみ上げているマンションの場合、停電したら断水する場合もあります。停電になってもマンション内の蓄電で駆動する場合もあると思いますので、自分の住んでいる環境は、停電によってどんなことが起こり得るのか、把握しておくことも大切です。

 

たとえ食べ物や飲み物の備蓄が万全でも、トイレができない…となると、ストレスがかかります。避難所は戸建て優先のため、マンションの人は浸水の恐れがある場合を除き、基本的には入れません。安心して過ごすためにも、しっかり準備しておきましょう。

 

自宅待機の場合は、自宅のトイレにセットすればOKです。大人だと、トイレに行く回数は平均1日8回というデータが出ているので、参考にしてください。ただ、ずっと家に置いておくことになるので、ニオイが結構きついという声もあります。ニオイが漏れないタイプを購入しましょう」
 

【島本さんの節水アイデア】

サランラップを活用!

「洗う手間がかからないようにお皿に敷いてから盛り付けたり、そのまま捨てられるものを使いましょう。自宅待機の場合は、割りばしやスプーンなど、洗わないで使えるものが意外になかったり、分散してどこにあるかわからなくなったりすることもあるので、洗わないでも使えるものを備えましょう」

 

避難する可能性がある人は
避難所までのルート確認を
 

住んでいる場所が、水害によりどの程度被害を受けるのか、ハザードマップで把握しておきましょう。避難が必要になる地域に住んでいる人は、一度家族でルートを確認しておくと安心です。

 

「避難所を優先的に使えるのは高齢者、1戸建ての方。家の場所や住環境によって優先度が変わってくるので、自分が何に当たるのか知っておくことも大事です。

 

また、避難所によっては、食べ物がそこまでない場合もあります。基本的に災害時に他人を頼るのはNGです。もらえることに期待せず、自分で備えておきましょう」
 

子どもが一人で自宅待機になる可能性も…。
家族で災害時のルールを決めましょう!
 

学校などの避難訓練によって、災害についてある程度知っている子どもが多いですが、家のルールがわからないという子どもたちも多いようです。家にいるときの対策を、この機会にご家族で話し合ってみましょう。

 

「仕事の関係などで、子どもだけで自宅待機になる可能性もゼロではありません。親がいるときといないときで、対策を考えておきましょう。

 

大事なのは、事前に話しておくこと。もしも自宅待機になったら『ママが帰ってくるまでおうちでビデオを見ててもいいからね』『食べ物はここにあるから、災害のときに食べるんだよ』『懐中電灯はここにあるよ』と、子どもだけでも安心して過ごせるように伝えておきましょう。

 

家族でルールを決めておくのもいいですね。この機会に一度、シミュレーションをしてみるのもおすすめです」
 

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